世界のニュースを映画批評風に考察してみるシリーズ第2弾、安倍首相のイラン訪問についてです。


アメリカとイランの緊張が高まる中、2019年6月12日~14日、安倍首相が日本の総理大臣として41年ぶりにイランを訪問いたしました。この件について、テレビのニュース解説や、解説記事をいくつも見ましたが、正しいようでどうもしっくりこない感じがありました。そこで、独自目線で考察してみたいと思います。ちなみに、株好きとして国際情勢をウォッチしていますが、国際政治の専門家でもなんでもありません。株好きオヤジが原油高を心配しながら居酒屋でくだ巻いているレベルと思ってみてください(笑) 

2019年日本・イラン首脳会談


ざっくりとあらすじ
2019年、中東の大国たるシーア派の雄・イランと世界の超大国アメリカの対立は深まっていました。一つのきっかけは、トランプ大統領が「オバマがイランと結んだ核合意はインチキだ!」と言い出したことです。アメリカの同盟国にはイスラエルやスンニ派の雄・サウジアラビアもあるため、事態は複雑です。イランとアメリカの非難合戦ののち、アメリカは艦隊をペルシャ湾に派遣するまでになりました。一触即発の戦争の危機・・・そんな火事場に、日本の総理大臣が41年ぶりに乗り込んでいくのでした。イランは伝統的に親日国であり、一方アメリカと日本の同盟関係も戦後最高のレベルまで高まっています。安倍首相はイランとアメリカをうまく仲介できるのでしょうか・・・?



感想と考察
その結末は、みなさんもご存じの通り、「仲介失敗」でした。安倍首相がイラン訪問中に、トランプ大統領がイランへの追加制裁を発表するわ、真相はまだ闇の中ですが日本のタンカーが攻撃されるわ(ただし、掲げていたのはパナマ国旗)・・・

あげくの果てに、
イラン「アメリカと話をすることなど何もない」
アメリカ「タンカー攻撃はイランの責任だ」

と非難合戦となり、かえって緊張が高まる始末・・・安倍首相にしてみれば、「いや・・・ちょ、ま・・・w」と言いたいことでしょう。

戦争の仲裁は失敗し、参院選に向けての外交成果をアピールしたかった安倍首相の目論見は外れた、意味のない外遊だった。というのがおおかたの見方です。

たしかに、「一度の訪問で戦争を仲裁する」という観点からみれば「失敗」でしょう。しかし、本当にそれだけでしょうか。短期的な目線だけではなく、長期的な目線から分析した解説がないように感じたため、たぶんテレビやニュース記事の解説に違和感を覚えたのではないかと思いました。そこで、長期的目線から今回のできごとを独自目線で考察してみたいと思います。

まず、大前提として、

安倍首相はもともとイランを訪問したかったのではないか?

という観点がないのではないかと思います。日本とイランは伝統的に友好国。できればイランから原油の輸入も行いたいし、原油の輸入のためのタンカーの多くがホルムズ海峡を通ることから、イランとの友好関係を維持したい。

しかしながら、イランは世界から孤立していて、トランプ大統領になってからイランとアメリカの緊張状態は悪化しています。

アメリカがイラン悪者発言を繰り返している中で、安倍首相が勝手にイランを訪問したとすると、「お前、どっちの味方やねん!?」「やっぱりジャップは油断ならない裏切り者!」と言われかねません。

そこで、”トランプ大統領に頼まれてイランを訪問する”という形を作ったのではないかと思います。こうすれば、アメリカのメンツも立つし、日本もアメリカから裏切り者扱いされることなく堂々とイランを訪問できます。

そうして、安倍首相は41年ぶりにイランを公式訪問し、さらに日本の総理大臣としてはじめて最高指導者とも会談ができたのです。従って、”戦争の仲裁”ができれば最高の結果であったことには間違いありませんが、ひとまずイランを訪問して(西側諸国から非難されることなく!)友好関係を確認することができたことこそが大事なのではと思います。

つまり、「イランを訪問したが何も成果がなかった」ということではなく、「(おおむね)何事もなくイランを訪問することができた」ということが最大の成果なのです。

では、今回のイラン訪問を、日本はどのように活かしていくべきでしょうか?
安倍首相のイラン訪問の長期的意義

1.北朝鮮問題
イランと北朝鮮ともに西側諸国から孤立していることから、独自のパイプがあると思われます。イランとの友好関係とそのチャンネルを維持することは、北朝鮮問題においても「てこ」の一つとして使えるときがくるかも知れません。

2.戦争回避のチャンネル維持
アメリカとイランの対立が今後どのように変化していくかは分かりませんが、「イランと最も親しい西側諸国の一つ」という立場を鮮明にできたため、今後、戦争回避の交渉においてまた大きな役割がまわってくるかもしれません。

しかし、イランには敵対勢力もあるため、イランとの親密さはリスクにもなりえます。「あくまで平和を望むため」という立場を徹底しておいた方が良いように思います。

3.自衛隊の危機回避
実は、これが最も大きいのではないかと個人的には思います。最悪のシナリオ「アメリカとイランが全面戦争に突入する」という場合、アメリカの戦争に自衛隊が駆り出されるというリスクがあります。これは、安保法制のときに反対派の人々が主張していた通りです。

特に、映画「空母いぶき」のレビューで触れましたが、最近自衛隊はアメリカ軍との一体化が進んでおり、日本のプレゼンスと抑止力が高まっている一方で、アメリカの戦争に巻き込まれるという危険性も高まっています。

そこで、
・日本とイランは伝統的に友好国である。
・日本は戦争回避のために努力をした。

ということを世界にアピールしておくことで、万が一アメリカが「イランを攻撃するからちょっくら自衛隊も参加してくれ」と言ってきたときに、「日本は平和主義国家でありイランとも友好国であるため、中立とさせていただきます」と言いやすくなるという効果はあるのではないかと思います。(ただし、なるべくこうならないために戦争回避の努力を続けることが最も大事でしょう)

スポンサーリンク 私が知らないだけでこういうことを言っているテレビ解説員とかはいるのかな?


総合評価(映画批評風に) 「現時点では失敗とも成功とも言えない」
★★★☆☆  3点

長期的にこれを生かすための努力が必要です。
 


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