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日本の潮の変わり目に~アメリカ議会での「希望の同盟」演説

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「ロードオブザリング」は私の大好きな映画のひとつです。その2作目、「二つの塔」に以下のような台詞があります。

「今は”白のガンダルフ”だ」

「そして、戻ってきた。潮の変わり目にな

魔法使いの「灰色」のガンダルフが苦境の中、帰ってきたときの言葉です。苦しい状況の中、事態の流れが変わるかもしれないということを予感させる名台詞になっています。

 

ところで、ここ10年ほどの日本の政治をウォッチしていて、10年前とは明らかに世界の中における日本の役割というものが変わってきていると感じます。その潮流が反転するきっかけとなった象徴的出来事が、私は二つあると思います。

その一つが、2015年に安倍首相がアメリカ議会で行った「希望の同盟」演説です。

日本の総理大臣がアメリカ議会で演説を行うのは、実に54年ぶりとのことでしたが、日本では驚くほどに報道がありませんでした。なので、ご存知ない方も多いでしょう。

しかし、これは実は凄い内容で、「それ以前の日本」と「それ以後の日本」を分かつ、まさに潮の変わり目となった演説だと思います。

映画批評を行いながら、映画批評風に国際情勢のウォッチもしている当ブログですが、「大局的なの流れの中で世界のニュースをとらえる」というポリシーのもと、重要なできごとだと考えますので、4年前の出来事ではありますがここであらためて振り返っておきたいと思います(映画批評風にw)。

 

希望の同盟演説(2015年)は日本の転換点となるか?

 

ざっくりとあらすじ

(スターウォーズのあらすじ調に)
「トラスト・ミー」

そう言った日本の総理大臣を

アメリカのオバマ大統領は

全く信用することができなかった

 

「戦後レジームからの脱却」

そう言って首相の座に返り咲いた新しい総理大臣も

リベラルなオバマ大統領からみれば

信用ならぬ歴史修正主義者だった

 

中国の存在感が増し

日本の存在感が希薄となっていくなかで

日本の総理大臣としては54年ぶりに

安部首相はアメリカ議会での演説に臨むのであった・・・

「それ以前の日本」

映画批評風に世界のニュースを考察するシリーズの中で、一度触れたことがありますが、繰り返しておきましょう。

言うまでもなく、日本は敗戦国であり、米軍基地が日本におかれ、日米安全保障条約の名のもの軍事的にも経済的にも「アメリカのポチ」としてやってきました。それでも(あるいはそのおかげで)日本は世界No.2の経済大国となることができました。

しかし、2000年代以降、状況は徐々に変化していきます。アメリカはテロとの戦いに疲弊し、もはや世界の警察としての役割を果たすことができなくなりつつありました。また、日本も長引く不況のなか自慢の経済力も低下し、ついには中国に世界No.2の経済大国の座を明け渡すこととなりました。

つまり、衰退していくアメリカと日本、それとは対照的に力を増していく中国という構図だったのです。

2008年にアメリカ大統領に就任したオバマ大統領は、あからさまに中国重視でした。オバマ大統領が初めて日本にやってきたときの演説を当時全て拝見したのですが、内容はほとんどが中国に関することばかりだったように記憶しています。中国と日本の区別ついていないのではないかと心配になったほどです。

さらに、日本で2012年に安部政権が誕生してからも、オバマ大統領は明らかに安倍首相を嫌っていました。リベラルなオバマ大統領から見て、安部さんは軍国主義を正当化する歴史修正主義者と認識していたのだと思います。

日本にとって厳しい状況でした。力を増す中国、こちらを向いてくれないアメリカ。

しかし、恐らくは安部首相及び周辺の関係者の地道な努力によって、事態は少しずつ改善に向かいました。そこで機会がめぐってきたのが2015年アメリカ議会での希望の同盟演説です。

 

希望の同盟演説(2015年)

外務省ホームページに全文記載されています。

『まだ高校生だったとき、ラジオから流れてきたキャロル・キングの曲に、私は心を揺さぶられました。  「落ち込んだ時、困った時、...目を閉じて、私を思って。私は行く。あなたのもとに。たとえそれが、あなたにとっていちばん暗い、そんな夜でも、明るくするために」。

 

2011年3月11日、日本に、いちばん暗い夜がきました。日本の東北地方を、地震と津波、原発の事故が襲ったのです。


そして、そのときでした。アメリカ軍は、未曾有の規模で救難作戦を展開してくれました。本当にたくさんの米国人の皆さんが、東北の子供たちに、支援の手を差し伸べてくれました。


私たちには、トモダチがいました。


被災した人々と、一緒に涙を流してくれた。そしてなにものにもかえられない、大切なものを与えてくれた。

――希望、です。


米国が世界に与える最良の資産、それは、昔も、今も、将来も、希望であった、希望である、希望でなくてはなりません。


米国国民を代表する皆様。私たちの同盟を、「希望の同盟」と呼びましょう。アメリカと日本、力を合わせ、世界をもっとはるかに良い場所にしていこうではありませんか。

 希望の同盟――。一緒でなら、きっとできます。』

また、この最も重要な部分に先立ち、スノーデン海兵隊中将と新藤義孝議員の関係性についても触れています。スノーデンさんは太平洋戦争時、激戦の硫黄島に上陸した経験があります。一方、新藤議員の祖父は硫黄島を守備した栗林大将です。

『これを歴史の奇跡と呼ばずして、何をそう呼ぶべきでしょう。熾烈に戦い合った敵は、心の紐帯を結ぶ友となりました』

 

この演説では、明確に日本とアメリカの関係性、そして世界の中で果たすべき役割の”アップデート”を行っています。

・日本はもうアメリカの敵ではない(安部は軍国主義の歴史修正主義者ではありません)

・日本はアメリカとともに世界の中で役割を果たしていきます(単なるポチだけでは終わりません)

そして、この敵→味方のスキームの変化を「希望の同盟」と呼びましょうと、アメリカ人の情緒にも訴えています。

まさに潮目が変わる演説ではないでしょうか?

 

「それ以後の日本」

オバマ大統領の安倍首相及び日本を見る目は明らかに変わりました。それが、オバマ大統領が広島を訪問するという一つの結果にもつながったのだと思います。

その後、トランプ大統領と安部首相は歴代最高水準にまで良好な関係を築いているのは周知の通りでしょう。

膨張する中国 vs 縮小するアメリカという長期的な構図の中で、日本が縮小するアメリカの穴の一部を埋めますということになって、日本が世界の中で果たすプレゼンスは確実に上昇しています。

縮小するアメリカを補うスキームが、「インド太平洋戦略」です。インド太平洋地域の安全保障を、アメリカ、日本、インド、オーストラリアで力を合わせて担いましょうという方向性になってきています。

自衛隊のペルシャ湾への派遣も、その大きな流れの中で判断する必要があるかと思います。

 

忘れてはいけない名脇役

この歴史的演説の前後で、極めて重要な役割を果たしたと私が考えるのが、キャロライン・ケネディ米国大使です。

ケネディ大統領の娘さんですが、政治経験はなく、日本大使就任も「お飾り」のような存在にすぎずアメリカ国内でも冷ややかな目で見られていたのではないかと思います。

しかし、安倍首相とケネディ大使のケミストリー(相性)が良かったこともあると思いますが、ケネディさんは安部首相とオバマ大統領の間を取り持つ重要な役割を果たしたと思います。個人的にはケネディさんを極めて高く評価しています。

オバマ政権の日本大使がケネディさんでなかったとしたら、安部さんはもっとアメリカとの関係性で苦労をしたことでしょう。

最後は「恋ダンス」も踊って帰っていってくれましたw
→「アメリカ大使館 恋ダンス youtube」で検索!

 

「そして戻ってきた。潮の変わり目にな」

このように2015年の希望の同盟演説は、潮目が変わる象徴的な出来事の一つであったと思います。

この希望の同盟演説は世界史の流れのなかで極めて重要なものとなる可能性があります。日本の政治評論家などで、こういったことを指摘されている方をあまり見かけないような気がします。そもそも日本国内での報道が少なかったことも問題だと思います。

そういうことで、4年前の出来事ではありますが、ここに改めて記しておこうと思います。

・・・しかし、ロード・オブ・ザ・リングでは、灰色のガンダルフが白のガンダルフになって帰ってきてからもなお、人間たちに苦しい戦いが続きます。指輪が破壊され、サウロンが滅びるまでには、更に多くの犠牲が必要でした。

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